Q5-11:責任能力があろうとなかろうと,人を殺した者を処罰しないと遺族は納得しないのではないか

A:
被害者の立場からはまさにその通りです。刑事制度も国民主権によって支えられている法制度の一つですから,凶悪な犯罪を犯した者を無罪放免にすることは許せないという世間一般の感情も決して無視することはできません。実際,アメリカのいくつかの州では心神喪失による無罪の制度が廃止されました。
しかし,これは実にデリケートな判断を要する問題です。刑罰という重い責任非難を行うことが全般的・長期的な視野から見て公正といえる場合はどんな場合かについて慎重に議論がなされなければなりません。
心神喪失や心神耗弱という責任能力制度は何も現代の日本だけが採用している制度ではありません。日本の歴史でいえば西暦718年に制定された養老律令にも精神障害の段階に応じて減刑を行う制度が取り入れられています。また,世界的に見れば近代的な刑事制度を採用するほとんどの国で責任能力制度が採用されています。
東西古今において責任能力的な制度が採用されてきたということは,それが人間社会においてある種の合理性を有していることの一つの証左であるということができます。
そのような合理性を持つ制度である以上,センセーショナルな事件によって巻き起こされる衝動的かつ流動的な感情論によって否定し去ってしまうことは決して望ましくないといえます。

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