Q5-8:相手がケガをさせる程度の侵害をしてきたのに対し,こちらが反撃して相手がたまたま死んでしまった場合,行為の正当性は認められないか
A:
相当性を有するか否かはその場の状況によって判断されることになりますが,たまたま生じた結果が甚大であっても,行為自体の危険性が高くかった場合には正当防衛の成立が認められる場合があります。
裁判例では,駅のホームで酔った男にからまれコートの襟をつかまれたので,その男の身体を手で突いたところ,男の方も酔っていたためよろけてホームから転落し,たまたま侵入してきた列車に轢かれて死亡してしまったケースにおいて正当防衛の成立を認めました。コートの襟をつかまれただけなのに比して死亡させたという結果は重いのですが,からんできた男に対してその身体を少し突いただけという行為の危険性は大きくないため,「相当性」を逸脱するものではないと判断したのです。